『枇杷(ビワ)の葉』の効果や効能とは?飲用で咳や去痰・鼻づまりに、湿布で皮膚炎やあせもに民間療薬!でも、種にはご注意!

初夏に可愛らしい黄金の実がなる“枇杷(びわ)”は、バラ科の常緑高木で、その実はもちろん、温暖な地域では庭木や街路樹としても親しまれてきた樹木です。

 

手で簡単にむいて食べる事が出来るビワの実には、ご存知のように真ん中にドーンと種があります。

 

バラ科だけに、「モモやさくらんぼのような“真ん中タネ”グループなんだなぁ」と思うものの、「出来れば真ん中には実が詰まっている方がおいしいがいっぱい!でいいなぁ」とか、「せめて同じバラ科でもリンゴのようにもっと食べられる部分が多いと嬉しい」なんて思った事はありませんか。

 

ちょっと夢見てしまう、リンゴサイズのビワ。あれ、なんだかそれって色が違う新種の桃っぽい?

 

どちらも実の周りにほわほわした毛(毛じ/もうじ)が生えていて、真ん中には、数は違えど種がある果物。

 

甘くて柔らかなその果肉も食べられる部分が存外少ないため貴重で、また柔らかさは桃と同様に運搬や陳列に気を使う事から、大きい品種がもしできたら価格急上昇の高額フルーツ待ったなし!なんて事になりそう。

 

庶民の憧れの黄金色のフルーツ!お宝感キラキラな果物、爆誕といったイメージ。

 

なんて妄想していたのですが、現実の世の中はもっとずっと進んでいて、実は千葉県にて平成18年に品種登録された「希房」という“種無しビワ”があるという事実。


なんというプレミアムフルーツ!そして、お値段を調べてみたら、とてもじゃないけれどオヤツや食後のデザートに気軽にいただけるような価格ではなく、セレブ向けなスーパーウルトラプレミアムプライスでした。

 

では、お味の方はいかがなのでしょう。ここが気になるところです。

 

召し上がった事のある方によると、通常の“種有り”の方が美味しいとのこと。

 

味覚は好みやその時の体調にもよるのですが、種の有無という点において、植物としての“種の保存”でもある鳥に好まれる要素(実を食べて種を遠くへ運んでもらう)を持たないからでしょうか。

 

…と、いつか口にしてみたい“希望”のお話でした。

 

そして一般流通している通常の“枇杷(びわ)”ですが、その果肉にも、甘みの「糖分」はもちろん、皮膚や粘膜の健康維持や免疫賦活(めんえきふかつ)作用がある「βカロテン(ビタミンA)」や、体の調子を整える「ミネラル」、さらに抗酸化作用への期待がある「ポリフェノール」など、様々な栄養素が含まれています。

 

やさしい甘さとほのかな酸味が爽やかな果肉は、生食だけでなく保存のきく缶詰や、お菓子のゼリー、ジャム、果実酒等の加工食品としても親しみのある果物です。

 

民間療薬として馴染みある“ビワの葉”だけでなく、果実に含まれる様々な栄養素によって、その実を食べることで、皮膚や粘膜、視力維持や呼吸器系統(咳や嘔吐など)に対して守る働きが期待されます。
おいしく食べて、気持ちも身体も健やかな健康維持が一番ですよね。

 

そして、その実よりも民間療薬としてその名をよく聞く“ビワの葉”は、科学が発達する以前から、アジア各国で民間での生薬として親しまれてきた古い歴史があります。

 

びわの葉、漢字で記すと『枇杷葉(ビワヨウ)』とやや難しい表記になります。

 

ところで、歴史的な話しも含めて、中国南西部原産の「枇杷(ビワ)」は、はたしていつ日本に伝えられたのでしょうか?

 

それは、古代(奈良時代頃)に薬用として仏教とともに僧医(そうい)によって伝えられたそうです。

 

僧医(医師でもあり、僧でもある)が用いていた事もあり、その薬用としての歴史は古く、遡ると古代インドの医療術(アーユルヴェーダ)に、そして仏教経典(大般涅槃経)に「大薬王樹(だいやくおうじゅ)」と記されている程、伝統医学とも深く関係している樹木でもあります。

 

一般的な食用としては、江戸時代以降に盛んになったそうです。
生薬としての薬用的な使い方や、ビワの葉や肉桂、甘草、木香など様々な生薬を煎じた飲み物が暑気払い(琵琶葉湯・びわようとう/夏の飲み物)として用いられ、親しまれてきました。

 

“枝葉根茎ともに大薬あり”という大薬王樹の名も持つ枇杷(ビワ)

葉には、体内でビタミンAに変換され、皮膚や粘膜の炎症を抑える「βカロテン」や「βクリプトキサンチン」、去痰作用を持つ「サポニン」、ポリフェノール(抗酸化物質)の一種で、コーヒーなどにも多く含まれる抗ウイルスや抗ガンなどの効果が期待される「クロロゲン酸」といった数多くの成分が含まれています。

 

このことから煎じて飲むだけでなく、煎じたものを冷まして、湿疹やあせも、皮膚の炎症に湿布したり、浴用料として使われる事もあります。

 

枇杷(ビワ)の“種”や“未熟な果実”には天然の有害物質が、多く含まれているのでご注意!

健康維持(鎮咳、去痰、健胃)効果への期待がある実や葉ではありますが、“種”や“未熟な果実”には天然の有害物質(シアン化合物/青酸化合物)が多く含まれているので、注意しなくてはいけません。

 

特に種子(タネ)を粉末加工したものは、大量に食べる事が出来るため、天然の有害物質を摂取する危険性が高まります。

 

農林水産省では、食中毒から身を守るために「ビワの種子の粉末は食べないようにしましょう」と注意喚起しています。

 

種子に含まれる「アミグダリン(シアン化合物の一種)」が、健康に良い成分のような情報がありますが、科学的に十分な根拠は無いそうです。

 

「アミグダリン」に対して、「ビタミンの一種」であるとか「ビタミンB17」であるとか、がんにたいしての「抗ガン作用がある」といった有効性や健康に良いといった効果は無く、むしろ臨床研究の結果によって得た「青酸中毒を起こす危険性」がある結論のもと、アメリカでは「FDA (米国食品医薬品局) 」によって販売が禁止されているそうです。(日本医師会「注意喚起File2」より)

 

ビワではありませんが、同じバラ科で「アミグダリン」を含む“アンズの種子”を大量に食べたことによる健康被害や死亡例もあることから、ビワの種子を原料とした食品の安全性についても、「シアン化合物濃度」を製造元に確認すると共に、料理のレシピにも注意が必要です。

 

厚生労働省の食品衛生法第6条第2号(有害な物質を含む食品の販売を禁止)違反として扱われる濃度「10mg/kg(10ppm)」を超えていないことが確認された食品で、なおかつ適量であれば安全に食べられるとの事です。

 

熟した果実で季節を感じたり、葉を原材料とした健康茶を適量服用したり、煎じ汁で炎症のある皮膚を洗ったりと、民間療薬として親しまれてきた範囲であれば、季節と風味を楽しむ食品のひとつとして味わいたいもの。

 

「大薬王樹」として大切に扱われ、今も親しまれている枇杷(ビワ)。

 

その葉の薬効成分を、健康茶で季節を問わず味わって、より健やかな毎日を過ごしたいですね。